労働審判とは、使用者と労働者の間の労働契約上の問題に対して、裁判官1名と審判官2名で構成される合議体で迅速かつ適切な解決を図る裁判所で運用展開されている手続きのことです。もっとも持ち込まれる紛議の大半は残業代未払いなどの賃金や解雇の有効性などの雇用関係の問題が占めています。あくまで使用者と労働者個人の間の争いを対象とするので、労使関係のように団体交渉については対象外で、各種のハラスメントのように従業員間の不法行為成立の有無などは一般の民事事件の範疇になるので対象外です。賃金や雇用関係などが典型的ですが、労働者個人を対象とする以上、争いのある金額の多寡は問いません。
労働審判が取り扱う問題は、通常の民事訴訟と重なる部分があります。決定的に違うのは審理が短期間で終了することが制度上保証されていることです。通常の訴訟では争いのある事実関係は厳格な証拠法則に準拠して判断がされることになるので、慎重に進みしばしば1年を超える期間になるなど長期化する傾向は否定できません。これに対して労働審判は原則として三回の期日で完了します。
一回目の期日では書面は全て提出しなければなりません。二回目以降は口頭での対応が必須となり、当事者の意思が明確になれば2回目で審理は終結します。対立関係が先鋭で三回目の期日を迎えた場合は、審判がくだされることになります。労働審判の判断を許容できないのであれば、通常訴訟に移行する道ものこされているわけです。